2008年度 日本比較政治学会(第11回大会)プログラム
2008年6月21-22日[於 慶應義塾大学 日吉キャンパス]
第1日 6月21日(土) 13:30~15:30
自由論題1|「アイデンティティと政策・政治制度」
[司 会]
若松邦弘|東京外国語大学
[報 告]
高野麻衣子|東京大学
「カナダ連邦制における地域主義―1921年連邦選挙を事例として」
福嶋美佐子|法政大学
「マイノリティの国際比較―都市コミュニティにおけるマイノリティの多様化」
森口舞|神戸大学
「1920年代におけるキューバ・ナショナリズム再発見の背景」
[討 論]
若松邦弘|東京外国語大学
庄司香|学習院大学
自由論題2|「民主化と政党システム」
[司 会]
浜中新吾|山形大学
[報 告]
石黒大岳|神戸大学
「選挙制度改革による政党システムの形成―クウェート国民議会の事例分析から―」
笠原樹也|神戸大学
「80年代ペルーにおける政軍関係―軍の政治的関心の変化と連続性」
中野亜里|早稲田大学
「残存『社会主義』国の多元的民主化の可能性―ベトナムの事例から」
[討 論]
浜中新吾|山形大学
滝田豪|大阪国際大学
自由論題3|「東南アジアにおける『民主主義体制』」
[司 会]
山本信人|慶應義塾大学
[報 告]
伊賀司|神戸大学
「メディアと不自由な民主主義体制―マレーシアの事例から考える民主化とメディアの自由に関する一試論」
五十嵐誠一|早稲田大学
「フィリピンにおける民主主義の定着のジレンマ―市民社会依存型選挙ガバナンスの陥穽」
中野龍|東北大学
「体制移行と国際システム―インドネシアの事例」
[討 論]
山本信人|慶應義塾大学
川中豪|アジア経済研究所
自由論題4|「欧州統合研究の諸相」
[司 会]
中田瑞穂|名古屋大学
[報 告]
南佳利|神戸大学
「リスク規制政策過程における司法機関―EUにおけるヨーロッパ司法裁判所の影響を中心として」
岡本宜高|神戸大学
「1970年代前半のイギリス外交―ヨーロッパ統合とデタントの間」
[討 論]
鈴木一人|筑波大学
川嶋周一|明治大学
自由論題5|「日本の選挙制度と政策の変化」
[司 会]
新川敏光|京都大学
[報 告]
佐々田博教|ワシントン大学
「『守りの農政』から『攻めの農政』へ―選挙制度改革が貿易政策に与える影響」
鷲野巣鼓弓|法政大学
「日本の歯科医療政策の変容―小泉以前と小泉以後」
[討 論]
新川敏光|京都大学
竹中治堅|政策研究大学院大学
自由企画1|「専門家とデモクラシー:補完と相克」
グローバル化やIT化の進展した現在、各国において、政策形成・執行や政権戦略策定などに際して専門家の高度な知識・スキルへ依存する程度が高まっている。一方で、専門家の政治的影響力の強化は、民意を基盤とした選出代表に正統性を与える代表原理と抵触するおそれがある。すなわち、デモクラシーと専門性の間には、専門性の活用によってデモクラシーの中身を豊かにする可能性がある一方で、逆にそれがデモクラシーの基盤を掘り崩す危険を併せ持った、両義的関係が存在している。 そこで、本企画では、先進デモクラシー諸国の政治過程において専門家/専門性が果たす役割について、英国ブレア政権の情報戦略と日本の金融検査行政を題材として、デモクラシーと専門性の間に介在する両義的緊張関係に着目しつつ分析する。
[司 会]
伊藤武|専修大学
[報 告]
高橋直樹|東京大学
「英国ブレア政権における専門家の役割とデモクラシーの行方」
伊藤正次|首都大学東京
「日本の検査行政と『専門性』―金融検査行政を素材として」
[討 論]
網谷龍介|明治学院大学
内山融|東京大学
16:00~18:00
自由論題6|「保守主義の政策分析」
[司 会]
堀江孝司|首都大学東京
[報 告]
近藤正基|京都大学
「統一ドイツにおける福祉国家の政治」
福島都茂子|京都大学
「先進諸国の家族政策と家族思想の比較分析―フランスの家族政策を中心に」
安武裕和|名古屋大学
「スウェーデンの民主化過程における保守主義的規範としての協調理念の転換―反政党的協調から政党間協調へ」
[討 論]
堀江孝司|首都大学東京
近藤康史|筑波大学
自由企画2|東南アジアコーカス「東南アジア政治の中央・地方関係」
東南アジアにおける地方政治を取り上げ、地方政治と国政の相互作用の解明を試みる。1990年代以後に国政の民主化と地方分権が進んだインドネシアとタイ、さらに1965年の成立以来代議制民主主義のもと連邦制を採用して州に一定の自治権を与えてきたマレーシアの3カ国を取り上げる。
[司 会]
岡本正明|京都大学
[報 告]
永井史男|大阪市立大学
「タイ・ラムパーン県にみる地方分権と地方政治」
河野元子|京都大学
「マレーシア・UMNOの賞罰政治とトレンガヌのPAS1999-2004年」
森下明子|京都大学
「インドネシア・東カリマンタンにおける地方政治勢力の盛衰と国政」
[討 論]
山崎幹根|北海道大学
自由企画3|「ポピュリズムの後に来るものは何か?―東南アジア、アフリカ、ラテンアメリカの事例の比較検討」
近年、世界的に進行しているといわれるポピュリズムだが、それをめぐる状況がここ数年大きく変わってきた。ポピュリズムの興隆と衰退をもたらす原因とは何か。リーダーによる政策革新の成否を分ける要因とは何か。東南アジア、アフリカ、ラテンアメリカの事例をもとに、そうした問題を比較検討しながら、ポピュリズムの後に来るものを考える。
[司 会]松本充豊|長崎外国語大学
[報 告]岩田拓夫|宮崎大学
「アフリカにおけるポピュリズムの現代的意義―サンカラ革命政権の軌跡を通じて」
左右田直規|東京外国語大学
「<限定されたポピュリズム>のゆくえ―マハティール政権期とポスト・マハティール時代のマレーシア政治」
安井伸|慶應義塾大学
「なぜチリではポピュリズムが成功しなかったのか―イバニェス政権後の政党システムの再編過程を中心に」
[討 論]
見市建|岩手県立大学
自由企画4|「非民主体制下での政権奪取を巡る政治空間:中東諸国の事例比較」
複数政党制に基づく議会政治が定着していない中東・アラブ諸国では、いずれも選挙によらない長期政権が続いている。議会制度によらずして在野の政治勢力が政権の座を目指すためには、過去(1950-70年代)には正規軍を動員した暴力装置によるクーデタか、政権内派閥抗争の結果としての政権改造が主流であった。しかし軍を含めた国家機能の特定の政党による独占が定着したことにより、政権中枢から外れた政治組織が中枢の権力構造を変えるルートが狭くなっている。その結果、現在の中東諸国で反政府政治組織が政権を奪取ないし参入しようとする試みには、以下の代表的なパターンが見られる。(1)民兵組織を中心とした準軍事組織による武力行動、(2)民族的、イデオロギー的に親和性の強い国外勢力からの支援、(3)限定的選挙制度を通じた政権参入、(4)コオプテーションにより集団的ないし個別に政権に取り込まれつつ、政権党自体の政治的方向性を変化させるパターン。本企画では、中東諸国の事例を取り上げ、事例比較を通じて、非民主体制のもとで繰り広げられる政権奪取の試みのさまざまな類型を論じる。
[司 会]
酒井啓子|東京外国語大学
[報 告]
青山弘之|東京外国語大学
「権威主義体制存続に貢献する反体制運動―シリア、ダマスカス宣言運動を中心に」
横田貴之|日本国際問題研究所
「現代エジプトにおける権威主義体制下の反体制運動―ムスリム同胞団の政治活動を中心に」
山尾大|京都大学
「戦後イラクにおける政治空間をめぐる闘争―『民主化』以降の『革命政権』と反体制派勢力の競合」
[討 論]
木村幹|神戸大学
分科会A|「政党システムの2ブロック競合化?」
「カルテル政党」論で知られるPeter Mairは、近年政党相互のヨコの関係についても、政党システムの2ブロック競合bipolar competitionが観察される国が増加していると指摘している。本パネルではまず、2ブロック競合への変容という現象が確認でできるかどうかを事例研究によって検討したうえで、これが政党と政党システムの変容についていかに有益な切り口を示すものであるかを考察する。
[司 会]
小野耕二|名古屋大学
[報 告]
大黒太郎|福島大学
「比例代表制下で2ブロック競合関係はいかに可能か―オーストリアの事例」
伊藤武|専修大学
「2大政党への道?―イタリア第2共和制下の政党競合」
空井護|北海道大学
「メアーの政党システム論における断絶と連続―『2極競争』論をめぐって」
[討 論]
阪野智一|神戸大学
18:30~20:30
懇親会
第2日 6月22日(日) 10:00~12:00
共通論題|「移民と国内政治の変容」
いわゆる「文化」を異にする多くの人の移動が近年激増し、それにともなって多様な政治治・社会問題が引き起こされている。大量の人の流出/流入が、それぞれの国内政治にどのような変化をもたらしているのか、そしてそれは国際情勢とどのような関係を持つのか、移民の送り出し国と受け入れ国との比較、さらに異なる地域間の比較を通して、検討してみたい。
[司 会]
唐渡晃弘|京都大学
[報 告]
小井土彰宏|一橋大学
「転換期の現代アメリカ合衆国の移民政策―9.11事件の衝撃と重層的管理様式の再編成」
小ヶ谷千穂|横浜国立大学
「送り出し国フィリピンの戦略―海外労働者の『権利保護』と『技能』の関係をめぐって」
久保山亮|ビーレフェルト大学
「イミグレイションに対する国家の4つのアプローチ―欧州11ヶ国の移民政策展開の比較」
[討 論]
都丸潤子|早稲田大学
澤江史子|東京外国語大学
12:00~13:00
理事会
13:30~14:00
総会
14:00~16:00
自由企画5|「開発途上国におけるfeasibleなdemocracyとその条件」
現在、途上国への開発援助の潮流において、民主的政治制度の導入を画一的に求める傾向が強く現れている。しかし、多様な政治・社会・文化的な制度を内在している途上国の側が、このような民主化に一律に対応できるとは限らず、様々な摩擦が発生している。ではどのような民主化であれば可能なのか、という点は必ずしも明らかになっていない。本部会では、部会では、途上国の複数事例を扱うことで、「途上国にとってフィージブルな民主主義・民主化とは何か」という問題を提起することとする。
[司 会]
恒川惠市|政策研究大学院大学
[報 告]
小林誉明|国際協力銀行
「国際援助システム下における民主化圧力と途上国の対応」
近藤久洋|東京国際大学
「ボツワナとバングラデシュの民主主義比較―家産制国家と半民主的国家」
林ゆり|横浜市立大学
「アフリカの内戦終結国における民主化の要件―モザンビーク、シエラレオネ、アンゴラを事例に」
[討 論]
恒川惠市|政策研究大学院大学
武内進一|アジア経済研究所
分科会B|「アジアの大統領制」
大統領制を採る国では、大統領のもつ権限や政党との関係が政治のありかたを大きく左右する。このような、大統領制を中心に一国の政治を分析する視点は中南米の政治研究をはじめとして最近盛んになっているが、アジアにおけるものは未だ少ない。そこで本パネルでは、フィリピン、インドネシア、韓国をとりあげ、これらの国において大統領制がどのように制度設計されているのか、またその政治的帰結は何かについて比較検討する。
[司 会]
岩崎正洋|日本大学
[報 告]
粕谷祐子|慶應義塾大学
「フィリピンの大統領制と政党システム―多党化要因の説明」
川村晃一|アジア経済研究所
「インドネシアの民主化と制度選択―安定的な『多党制下の大統領制』を目指して」
浅羽祐樹|山口県立大学
「首相がいる韓国の大統領制―首相の任命・解任をめぐる大統領と議会の関係」
[討 論]
佐川泰弘|茨城大学
岸川毅|上智大学
分科会C|「比較政治学としての政治思想史:日本の事例を中心に」
従来、交流の少なかった比較政治学と政治思想。しかし、多くの場合、両者は共に特定の地域における特定の事象(思想)を対象とする、という意味で、類似した側面を多く有している。果たして、比較政治学と政治思想史研究の対話はどのようにして可能なものになるのであろうか。本セッションでは、この問題について、日本政治思想を手がかりに考えてみたい。
[司 会]
木村幹|神戸大学
[報 告]
桐原健真|東北大学
「日本における『帝国』概念の受容」
植村和秀|京都産業大学
「日本における思想と制度の関係について」
[討 論]
瀧井一博|国際日本文化研究センター
島田幸典|京都大学
分科会D|「安倍政権とは何だったのか―小泉政権との比較から」
安倍政権とは、いったいいかなる政権だったのか、それは何を狙い、なぜ蹉跌を余儀なくくされたのか。本分科会では、コア・エグゼクティヴや自民党総裁の党内権力基盤のあり方、首相の政権運営スタイルや言説戦略の特徴など、できる限り多角的に分析のメスを加えながら、しかし方法的には、およそ対照的な軌跡を残した小泉政権との時系列的な「タテ」の比較という一貫したアプローチのもと、安倍政権の特質の解明を試みる。
[司 会]
空井護|北海道大学
[報 告]
上神貴佳|高知大学
「自民党総裁選出過程の比較検討―小泉、安倍、福田の各選出を事例として」
高瀬淳一|名古屋外国語大学
「政権運営と政治コミュニケーション―小泉・安倍政権の比較を中心に」
牧原出|東北大学
「官邸主導と安倍内閣」
[討 論]
内山融|東京大学
分科会E|「比較福祉国家・レジーム研究における政治学と社会学との対話可能性」
政治学における比較福祉国家・レジーム研究は、社会経済的変数に対する政治的変数の重要性を強調することで発展してきた。しかし、アプローチ間の差異を認識しつつ、それらをつき合わせることで、新たな知見が生まれ、研究対象への理解も深化する。そこで本分科会では、政治学者と社会学者の報告に基づき、比較福祉国家・レジーム研究を対象とした政治学と社会学との対話可能性を模索する。
[司 会]
田村哲樹|名古屋大学
[報 告]
西岡晋|金沢大学
「『第三世代』の比較福祉国家研究における政治学と社会学の隔絶と接近―今なお『政治が重要』なのか?」
田中拓道|新潟大学
「現代福祉国家論における『政治』―1970年代以降の方法の変遷」
武川正吾|東京大学
「福祉国家の社会学と政治学と」
[討 論]
宮本太郎|北海道大学
分科会F|「国内政治の転機としての戦争」
これまで戦争を対象にした政治学的分析は、戦争を国家の対外関係の一部ととらえ、またなぜ戦争が起き、それがどのように展開し、終わるのかといった、戦争を被説明変数にする研究がほとんどである。もちろん、戦争の国内社会への負荷や政治体制への影響といった内政上のインパクトはそれなりに意識されてきたが、本パネルでは、第二次世界大戦を題材に戦争がもたらす国内政治上の変化について新たな知見を得る試みを行いたい。
[司 会]
岡山裕|慶應義塾大学
[報 告]
鹿毛利枝子|東京大学
「第二次世界大戦の団体参加へのインパクト―神戸・札幌YMCAの比較事例分析」
山岸敬和|南山大学
「総力戦と医療保険制度―1930~40年代の日米英を事例に」
[討 論]
中北浩爾|立教大学
高安健将|成蹊大学