2020年度 日本比較政治学会(第23回大会)プログラム
2020年6月27日-28日[於 大阪市立大学]
- 新型コロナウィルスの感染拡大に伴い 、2020年度研究大会の開催方法を、ウェブサイト上でのペーパーでの成果公開、報告者・討論者の書面等による議論、および企画責任者による全体取りまとめの公表を軸とした開催に変更させていただきます。
(1)大会企画の今後の進行について
[スケジュール]
- 4月末:要旨集の公開(学会ウェブサイト等)
- 5月末:論文提出〆切・企画責任者による関係者(討論者・司会者等)への回覧
- 6月第1週〜第2週:討論者によるコメント準備期間
- 6月第3週〜第4週:コメントへの応答・企画責任者のまとめ(6月26日〆切)
- 6月第4週末〜:企画資料のウェブサイト掲載開始(掲載期間は7月中旬まで)。公開は会員限定であることにご注意ください。
- ※例年通り、大会プログラム(このページ)の報告者・タイトル名の部分にPDFファイルのリンクを張る形式で公開いたします。討論・総括も同様の形式で公開します(6/24追記)。
[分科会・自由企画・自由論題]
- 企画責任者の調整と判断で、書面での議論(討論者コメント、報告者応答など)あるいはオンラインでの議論を行って下さい。
- 企画責任者の方は、企画趣旨・報告内容・コメントと応答内容をまとめたご報告(A4・40字×40字・1600字以内)を作成してください。
- 書面での議論の場合、例えば、各報告者の報告資料+討論者のコメント資料+報告者による応答の資料をやりとりすることが考えられます。
- オンラインでの議論を実施される場合、企画関係者全員の合意が取れれば、動画ファイルによって、企画責任者まとめ以外の資料の全部または一部を代替したり、参考として追加したりすることも可能です。動画については、企画責任者の責任において適切なセキュリティーをかけて、会員限定に公開できるよう、共有フォルダや動画サイトのリンクなどの情報を企画資料に記載してください。
- Zoom等によるオンライン・セッションのリアルタイムでの配信は、別途会員同士で特別公開が告知されているもの以外は、行われません。(6/24追記)
[共通論題]
- 大会の核となる共通論題については、別途、企画委員長を中心に調整し、可能な限りオンラインで会員限定公開するなど、会員の方に広く配信できる方向で調整中です。
- スケジュールや運営方法の詳細は、今後のメーリングリストや学会ウェブサイト等での案内をご参照下さい。
[お断り] 以上の大会運営スケジュール、方法については、今後の状況により、若干の変更が生じうることをご理解いただきたく存じます。
(2)総会運営について
- 総会資料:会員管理サイトに掲載致します。
- 学会奨励賞発表・表彰:選考委員会の選評・受賞者挨拶を総会資料として掲載することで代替致します。別途学会ウェブサイトでも掲載いたします。賞状・賞金については、別途郵送等で送付するなど、適切な方法で受賞者にお渡し致します。
- 決算(監査報告)・予算・新執行部の承認:通常は総会会場において皆様に賛否をお伺い致しますが、今回は、事務委託先への連絡で代替させていただきます。ご異議やご質問がございます方は、資料公開を知らせるメーリングリスト配信後24時間以内に、メール(事務委託先アドレス: jacp[アットマーク]nacos.com)まで、会員番号明記の上(氏名不要)、ご意見や質問をお送り下さい。事務委託先から事務局へは、会員番号等個人情報を一切除いて報告をいただきます。異議が会員数の過半に達するなどの場合は、再検討させていただきます。頂いた質問については、会員管理サイトやメーリングリスト等を通じてお答えして、可能な限り運営の透明性を確保するように致します。
詳細については、今後、学会ウェブサイトやメーリングリストでご案内させていただきます。
第1日 6月27日(土) 13:30~15:30
分科会A|「民主政治の存続と文民統制の比較政治学」
文民政府による軍の政治介入の抑止ないし軍の政治への不介入は、文民統制として比較政治学においても重要なトピックであり続けてきた。しかし理論面での発展は、1960年代前後にS・P・ハンティントンが主体的/客体的文民統制の概念を提示し、それをめぐって活発な議論が交わされて以降は、ながらく停滞状況にあった。近年は、クーデタ耐性(coup proof)の議論によって権威主義体制における文民統制――対義語が軍事独裁であると考えると非民主体制においても文民統制は存在しうる――が注目されるようになってきたものの、民主政治との関係が本格的に検討されることはまれである。
にもかかわらず、文民統制は安定した民主政治の前提条件であるとみなされ、文民統制の成否が民主政治の存続に与える影響は決定的であるといえる。民主政治のもとで文民統制がいかに実施され機能しているかという点を明らかにすることは、民主化と文民統制の関係を考察する際にも不可欠な視点を提供するものである。
そこで本分科会では、軍が政治・社会において強いプレゼンスを持っている(あるいは過去に持っていた)国々のうち、民主政治の維持に成功していると思われる事例(スペイン・ポルトガル、ウクライナ)と民主政治が安定しない事例(パキスタン)をとりあげ、それぞれにおける文民統制と民主政治の存続との関係について考察する。その際には、それぞれの歴史的背景の相違にも留意し、構造的/長期的要因と短期的要因を複合的に分析することで、民主政治における文民統制の実際や民主政治の存続への影響についての比較検討を試みたい。
[司 会]
岩坂将充 | 北海学園大学 セッション総括
[報 告]
武藤祥 | 関西学院大学
「民政移管の態様と文民統制との関係:スペイン・ポルトガルの事例から」
討論への応答
松嵜英也 | 津田塾大学
「ウクライナにおける大統領の国軍統制の強化:2014年政変後の軍改革の事例研究」
討論への応答
栗田真広 | 防衛研究所
「民軍関係から見たパキスタン現行民主体制(2008年~)の評価」
討論への応答
[討 論]
濱中新吾 | 龍谷大学 武藤報告へのコメント 松嵜報告へのコメント 栗田報告へのコメント
分科会B|「多国間比較研究の挑戦」
多国間比較研究はデータの拡張に伴い増加し、一国研究や少数事例研究では見えてこない新たな知見を生み出してきた。近年も、いくつものデータセットが急速に蓄積・公開されている。ただし、多国間比較研究は玉石混交であり、データの信頼性、因果関係の妥当性、ミクロ的基礎付けなどについて、さまざまな課題も抱えている。本パネルでは、こうした多国間比較研究が抱える課題をふまえ、新たな視点・アプローチによって多国間比較研究の可能性を広げる試みを行っている3報告を通して、多国間比較分析の課題や今後の方向性について考えたい。
[司 会]
鷲田任邦 | 東洋大学 セッション総括
[報 告]
今井真士 | 学習院大学
「権力濫用と個人支配化の諸条件:国家元首の任期制限はいかなる制度配置において緩和・撤廃されるのか」
討論への応答
九島佳織 | 東京大学・院
湯川拓 | 東京大学
日高薫 | 大阪大学
“Coups and Framing: How do Militaries Justify the Illegal Seizure of Power?”
討論への応答
門屋寿 | 早稲田大学・院/日本学術振興会特別研究員
「選挙結果と権威主義体制の命運」
討論への応答
[討 論]
高橋百合子 | 早稲田大学
中井遼 | 北九州市立大学
自由企画1 | 「新しい社会的リスクと格差に対する福祉国家再編の政治:日仏の比較から」
福祉国家に関わる比較政治学研究では、長らく年金、医療、失業手当など、働き手の所得喪失リスクに対応する制度がおもな対象となってきた。これらの制度の違いを説明するために、労使の権力関係、政党の党派性、制度の経路依存などに着目するアプローチが発展してきた。
2000年代以降、上記の「古い社会的リスク」に加えて、「新しい社会的リスク」への対応が政治的争点として浮上した。新しい社会的リスクとは、産業構造の変化による労働市場の変容、女性の就労による家族の変容によって生まれたリスクを指す。不安定な就労の拡大にどう対応するか、ケア労働をどう社会化するかが問われるようになった。
しかし、新しい社会的リスクへの各国の対応を分析する枠組みは、まだ発展途上である。特に重要なのは、労使関係や左右の党派性に着目するだけではそのメカニズムをうまく説明できないことである。本分科会では、新しい社会的リスクへの対応を代表する三つの政策領域を対象として、最新の理論動向を踏まえた比較分析を試みる。①社会的経済・NPOによる社会的包摂政策と福祉ガバナンス、②子育て支援政策、③労働市場の二分化への対応である。
比較の対象はフランスと日本とする。近年の福祉国家研究では多数事例を用いた量的研究が中心となっている。しかし、上記のように理論が未発達である場合、少数事例の比較によって新たなアクター・政治的メカニズムを発見できる可能性がある。本分科会では、保守主義レジームに近い制度を持ちながら、寛大な社会的包摂政策と家族政策を発達させてきたフランスと、それらへの対応が進まない日本を比較し、分岐の要因は何か、政策領域によっていかなるメカニズムの違いがあるのかを検討する。
[司 会]
近藤康史 | 名古屋大学 セッション総括
[報 告]
野末和夢 | 一橋大学・院
「福祉ガバナンスの変容と福祉国家再編:日仏の非営利組織の位置付けを中心にして」
討論への応答
千田航 | 釧路公立大学
「脱普遍主義と「自由選択」:2010年代家族政策の日仏比較」
討論への応答
田中拓道 | 一橋大学
「労働市場の二分化の政治的影響:日仏の比較」
討論への応答
[討 論]
宮本太郎 | 中央大学
近藤康史 | 名古屋大学
自由論題A|「権威主義体制と社会運動」
[司 会]
横田貴之 | 明治大学 セッション総括
[報 告]
大澤傑 | 駿河台大学
五十嵐隆幸 | 防衛大学校・院
「台湾政党政治における権威主義体制期の経路依存性」
討論への応答
谷口友季子 | 早稲田大学・院
“Elections and Opposition Challenges in Authoritarian Regimes”
討論への応答
上野祥 | 東京大学・院
「選挙権威主義体制における抗議行動の動員主体の検討:ムバーラク政権期エジプトを事例に」
討論への応答
[討 論]
宇山智彦 | 北海道大学 リプライへの応答
伊賀司 | 京都大学
自由論題B|「地方政治の政策過程」
[司 会]
上谷直克 | アジア経済研究所 セッション総括
[報 告]
髙松淳也 | 名城大学
「イギリスのインフラ整備政策における官民関係と政治」
討論への応答
李昭衡 |東京大学・院
「都道府県の外交政策:対北朝鮮決議の比較分析を通して(1997年〜2018年)」
討論への応答
須川忠輝 | 大阪大学・院
「誰が行政サーヴィスを供給するのか:チェコとスロヴァキアにおける中央地方関係と政治」
討論への応答
[討 論]
安中進 | 早稲田大学
第1日 6月27日(土) 16:00~18:00
分科会C|「立憲君主制と民主主義:君主は民主主義を救えるか」
近年、世界的に選挙を通じて選出された政治指導者たちの強権性が注目を集めている。民選でありながら目的のためには人権侵害も厭わず、法の支配も破壊する強権的指導者の姿勢が、民選政治家の資質と民主主義の将来への懸念を抱かせている。
民選の政治指導者への不信から、民主主義の暴走を制御しうる存在として君主制が注目を集めている。果たして非民選の君主は、民主主義の救世主となりうるのか。
本分科会は、民主主義の問題点を補う存在としての君主制の可能性に着目し、民主主義と君主制の関係について歴史的な変容、地域や国ごとの差異について明らかにし、君主制が民主主義に対してどのような影響を与えてきたか具体的に検証を行うことを目的とする。
君主制に関する既存研究は、君主制の安定性について解明を試みるものが多い。また、君主の民主主義における役割に対して非常にポジティブな評価を行い、大いなる期待を寄せる研究もみられる。しかし本分科会では、国王または王室を政治アクターとして捉え、現代政治の中で実際にどのような動きをし、現実として政治体制に対していかなる影響を与えてきたのかについて精緻な検証を行いたい。
事例として取り上げるのは、タイ、マレーシア、スペインの3か国である。討論者には、中東の君主制の専門家を招いた。いずれの君主制も独自の特徴を持っており、興味深い事例といえよう。各事例の検証を通じて、21世紀における民主主義と君主制の新たな関係性について模索したい。
[司 会]
外山文子 | 筑波大学 セッション総括
[報 告]
浅見靖仁 | 法政大学
「タイにおける王室の政治的役割の変化と民主主義の迷走」
討論者からのコメント 討論への応答
左右田直規 | 東京外国語大学
「マレーシアにおける連邦君主制と民主主義」
討論者からのコメント 討論への応答
永田智成 | 南山大学
「スペイン政治と国王」
討論者からのコメント 討論への応答
[討 論]
石黒大岳 | アジア経済研究所
堀拔功二 | 日本エネルギー経済研究所 中東研究センター
分科会D|「代表制と社会経済的格差」
第二次世界大戦後、多くの国々では福祉レジームの差異はありつつも、福祉国家化が進展してきた。しかし、1980年代以降は新自由主義的改革と技術革新の下で、経済格差が徐々に広がっている。2000年代以降、アメリカを中心に代表制が社会経済的格差を反映・拡大する方向に寄与している可能性が提示されている。
日本においても経済的格差は拡大している。また社会経済システムのあり方をめぐっては、世代やジェンダー平等のあり方も深く関わる。ただし、どのような社会経済的格差が人々やエリートにどのように認識されているのか、またエリートと有権者の間で平等認知や政策の方向性は一致しているのだろうか。
そこで、本分科会では日本を主な対象としつつ、2018年と2019年に実施されたエリートと有権者双方への平等観調査のデータを世代間、ジェンダー、政治的平等(権力構造)の視点から分析する。それらを通じて、代表制が社会経済的不平等とどのような関係にあるのかを検討する。
[司 会]
濱本真輔 | 大阪大学 セッション総括
[報 告]
遠藤晶久 | 早稲田大学
「現代日本の世代間不平等観」
討論への応答
大倉沙江 | 三重大学
「日本の政治エリートと有権者のジェンダー平等観」
討論への応答
山本英弘 | 筑波大学
「日本の政治構造とエリートの平等認識:2時点におけるエリート調査の比較分析」
討論への応答
[討 論]
辻由希 | 東海大学
西澤由隆 | 同志社大学
自由企画2|「権威主義化の第3の波?」
「民主化の第3の波」が1990年代の政治学界のキーワードであったが,最近の研究では「権威主義化の第3の波」や「民主主義の後退」が現代の抱える重要な課題であるとの見方が定着してきている。しかしながら,この問題に関していまだに明確になっていない点は多い。例えば,権威主義化の波の程度や影響は地域によりどう異なるのだろうか。選挙で選ばれた政権が政治的・市民的自由を制限する形で民主主義を浸蝕しているのが権威主義化の主要なパターンであるという指摘はすでに定説化しているが,世界全体を見渡した場合にどこまで共通する傾向なのだろうか。また,論争の焦点はダールのポリアーキー条件という意味での民主主義を想定することが多いが,それ以外の民主主義の捉え方を用いた場合,現代世界の「民主主義の後退」はどのような状態にあるのだろうか。
本パネルでは,これらの問題に関し,フリーダムハウス指標やポリティ指標に並ぶ民主主義指標として2015年頃から毎年更新・公開さているVarieties of Democracy (V-Dem)データベースを用いる3つの論文をもとに検討する。中東欧諸国を分析する中井論文は,様々な民主主義指標の下位スコアの通時的変化を詳細に分析し,巷間指摘される「東欧における民主主義の後退」の内実や妥当性について検討する。ラテンアメリカ諸国を分析する上谷論文は,熟議的(deliberative)民主主義および平等主義的(egalitarian)民主主義指標の構成要素に着目し,最近のラテンアメリカの政治状況を解明する。サブサハラアフリカを分析対象とする長辻論文は,選挙の質に関連する諸指標を用いて,政権交代が選挙の質に与える負の影響を分析する。
[司 会]
粕谷祐子 | 慶應義塾大学 セッション総括
[報 告]
中井遼 | 北九州市立大学
「東欧・旧共産圏における「民主主義の後退」の検証」
討論への応答
上谷直克 | アジア経済研究所
「分極化と権威主義化が交錯するラテンアメリカ」
討論への応答
長辻貴之 | 早稲田大学・院
“Electoral Blind Spot in Africa”
討論への応答
[討 論]
川中豪 | アジア経済研究所
粕谷祐子 | 慶應義塾大学
自由論題C|「比較政治の方法と実証」
[司 会]
中村正志 | アジア経済研究所 セッション総括
[報 告]
井関竜也 | 京都大学・院
石間英雄 | 京都大学・院
“Clarity of Responsibility and Judicial Compliance: Time-series Cross-national Analysis of Post-War Democracies”
討論への応答
中村覚 | 神戸大学
“Experimental Study on Different Regime Types: A Comparison of Counterterrorism Measures between Indonesia, a Democratic Regime, and Saudi Arabia, an Authoritarian Regime”
討論への応答
髙橋正樹 | 武蔵野大学
「地域研究もしくは比較政治学の方法論:批判的実在論の観点から」
討論への応答
[討 論]
岡田勇 | 名古屋大学
中村正志 | アジア経済研究所
馬場香織| 北海道大学
自由論題D|「多様なステークホルダーと利害調整の政治」
[司 会]
岩坂将充 | 北海学園大学 セッション総括
[報 告]
川島佑介 | 茨城大学
「ロンドン五輪を通じた東ロンドン再開発の新規性について」
討論者からのコメント 討論への応答
田中聡 | 大阪大学・院
“Power Sharing and Patronage Ethnic Politics: Evidence from the Dayton Bosnia”
討論者からのコメント 討論への応答
松本俊太 | 名城大学
「アメリカ連邦議会における財政調整「制度」の転用の「過程」:ブッシュ(子)・オバマ・トランプ政権の重要立法の比較事例研究」
討論者からのコメント 討論への応答
[討 論]
溝口修平 | 法政大学
松尾秀哉 | 龍谷大学
第2日 6月28日(日) 10:00~12:00
共通論題|「インフォーマルな政治制度とガバナンス」
比較政治学の主たる分析対象はフォーマルな政治現象であるが、その一方で、現代世界の政治にはインフォーマルな部分が存在することも広く認知されている。それが顕著な事例が紛争国家であり、中央政府によるフォーマルな政治制度やガバナンスが機能不全を起こす半面、宗教やエスニシティといった伝統的紐帯に基づく統治、さらには、反政府武装組織や外国勢力による実効支配など、インフォーマルな政治が展開されることは少なくない。
この共通論題では、こうした括弧付きの「政治制度」や「ガバナンス」を比較政治学の議論の俎上に載せることを目的とする。そこでは、その実態の経験的・多角的な把握を試みるとともに、インフォーマルな政治が含意すると理論的なインプリケーションを引き出すことを目指す。
フォーマルに縛られないインフォーマルな政治は、その程度に違いはあれども、実際には様々なかたちで紛争国家以外でも見られてきた。しかし、今日では、越境的な資本や人口の流動性の高まり、情報通信技術の急速な発達、あるいは、市民意識の「伝統」への回帰傾向を背景に、その規模を拡大しつつあるように思われる。その意味において、インフォーマルへの注目はフォーマルの役割の自明性の問い直し、さらには、比較政治学の分析対象や前提の捉え直しの契機を含むものになり得るだろう。
[司 会]
末近浩太 | 立命館大学
[報 告]
岡本正明 | 京都大学
「インフォーマルな暴力の「政治参加」の常態化:インドネシアの事例から」
窪田悠一 | 新潟県立大学
「反乱軍による公共サービスの提供とナショナル・アイデンティティ:内戦後社会の市民意識に対する国家横断的アプローチ」
酒井啓子 | 千葉大学
「逸脱か、研究者の怠慢か:社会科学で「見えない」ものを見ようとしたら、それは社会科学ではないのか」
[討 論]
武内進一 | 東京外国語大学/アジア経済研究所
馬場香織 | 北海道大学
第2日 6月28日(日) 14:00~16:00
分科会E|「権威主義体制における地方議会」
権威主義体制より一般に非民主主義体制に存在する議会や選挙が、体制の安定に貢献するという議論が比較政治学において受け入れられて久しい。しかし、企画者の見るところでは、先行研究には2つの問題があった。第一に、制度が存在するにもかかわらず、明らかに体制が安定していない事例に焦点があたってこなかった。また、制度が存在することで秩序が安定する動態に関する記述はなされてこなかった。第二に、秩序維持の要となるはずの地方統治のために重要な地方議会も分析されてこなかった。
そこで本パネルでは、秩序と地方議会という焦点から、現代ロシア・モザンビーク・明治時代の日本に関するご報告を以下の三人の先生方にお願いした。
これら3本の報告は、いずれも国家建設期の事例にあたると考えている。ソ連崩壊後に国家建設をやり直したロシア、国家建設に苦闘して来たアフリカ諸国からモザンビーク、そして明治期の日本の三か国は、国家建設と地方統治において、政治制度が果たす役割を分析するのに好適である。三報告を通じて、それぞれの事例について深く学べるだけでなく、まとめて見た場合には比較政治学の先行研究に大きく貢献するものと考えている。
[司 会]
豊田紳 | アジア経済研究所 セッション総括
[報 告]
油本真理 | 法政大学
「現代ロシアにおける政治秩序の形成と地方議会選挙」
討論への応答
網中昭世 | アジア経済研究所
「モザンビークにおける地方議会選挙:民主化の要件から野党懐柔の道具へ」
討論への応答
季武嘉也 | 創価大学
「日本における1890年代の地域社会の混乱とその収束」
討論への応答
[討 論]
豊田紳 | アジア経済研究所
自由論題E|「政党政治と政策」
[司 会]
庄司香 | 学習院大学 セッション総括
[報 告]
粒良麻知子 | アジア経済研究所
“Presidential Candidate Selection and Electoral Transfers of Power in Sub-Saharan Africa”
討論への応答
縄倉晶雄 | 明治大学
「民主化後の韓国政党政治に対する再評価:選挙ガバナンスの視点から」
討論への応答
手塚沙織 | 南山大学
「高度人材の受入政策におけるクリントン政権内の認識」
討論への応答
[討 論]
安周永 | 龍谷大学
庄司香 | 学習院大学
自由論題F|「サーベイ実験のフロンティア」
[司 会]
稗田健志 | 大阪市立大学 セッション総括
[報 告]
勝又裕斗 | 横浜市立大学
“Item Response Theory for Conjoint Survey Experiments”
討論への応答
安中進 | 早稲田大学
鈴木淳平 | 早稲田大学・院/日本学術振興会特別研究員
「消費税と世論の支持:逆進性と社会保障の普遍性」
討論への応答
松本朋子 | 東京理科大学
加藤淳子 | 東京大学
「福祉給付と税負担に対する有権者の態度:米英日スウェーデンのサーヴェイ実験」
討論への応答
[討 論]
飯田 健 | 同志社大学
稗田健志 | 大阪市立大学
自由論題G|「「ポピュリスト」政治指導者と民主主義の行方」
[司 会]
外山文子 | 筑波大学 セッション総括
[報 告]
牟禮拓朗 | 一橋大学・院
「チュニジア民主政治の転換:世俗主義/イスラーム主義二項構造の瓦解およびポピュリズム台頭の背景」
討論者からのコメント 討論への応答
渡邉容一郎 | 日本大学
「イギリス保守主義から見たボリス・ジョンソン:ポピュリストか、それともワンネーション・モダナイザーか」
討論者からのコメント 討論への応答
生駒智一 | 立命館大学・院
「韓国政治における金鍾泌の役割:三金時代 (1988~2003)の分析」
討論者からのコメント 討論への応答
[討 論]
近藤康史 | 名古屋大学
横田貴之 | 明治大学