企画委員会による2020年度学会大会・共通論題の企画内容公開のお知らせ

2020年度日本比較政治学会大会

共通論題「インフォーマルな政治制度とガバナンス」

企画委員長 末近浩太(立命館大学)

比較政治学の主たる分析対象はフォーマルな政治現象であるが、その一方で、現代世界の政治にはインフォーマルな部分が存在することも広く認知されている。それが顕著な事例が紛争国家であり、中央政府によるフォーマルな政治制度やガバナンスが機能不全を起こす半面、宗教やエスニシティといった伝統的紐帯に基づく統治、さらには、反政府武装組織や外国勢力による実効支配など、インフォーマルな政治が展開されることは少なくない。
この共通論題では、こうした括弧付きの「政治制度」や「ガバナンス」を比較政治学の議論の俎上に載せることを目的とする。そこでは、その実態の経験的・多角的な把握を試みるとともに、インフォーマルな政治が含意すると理論的なインプリケーションを引き出すことを目指す。
フォーマルに縛られないインフォーマルな政治は、その程度に違いはあれども、実際には様々なかたちで紛争国家以外でも見られてきた。しかし、今日では、越境的な資本や人口の流動性の高まり、情報通信技術の急速な発達、あるいは、市民意識の「伝統」への回帰傾向を背景に、その規模を拡大しつつあるように思われる。その意味において、インフォーマルへの注目はフォーマルの役割の自明性の問い直し、さらには、比較政治学の分析対象や前提の捉え直しの契機を含むものになり得るだろう。

司会:末近浩太(立命館大学、企画委員長)
報告者:岡本正明(京都大学)「インドネシアのインフォーマルな政治制度」(仮)
    窪田悠一(新潟県立大学)「反乱軍による公共サービスの提供と市民のナショナル・アイデンティティ」(仮)
    酒井啓子(千葉大学)「逸脱か、研究者の怠慢か:社会科学で「見えない」ものを見ようとしたら、それは社会科学ではないのか」(仮)
討論者:武内進一(東京外国語大学/JETROアジア経済研究所)
    馬場香織(北海道大学、企画副委員長)