企画委員会による2022年度学会大会・共通論題の企画内容公開のお知らせ
日本比較政治学会第25回研究大会(於九州大学)
(2022年6月25~26日)
共通論題「危機と国家」
企画委員長 稗田健志(大阪市立大学)
近年、比較政治学の分析対象として中心的位置を占めてきた「国家(state)」への関心が、後景に退いてきているように思われる。その背景には、「因果推論革命」を経た現在の政治学の実証水準では、反実仮想を作りにくい国家レベルの分析よりも、より堅固な因果推論が可能な個人や地域レベルの分析へとシフトしているという潮流があるのかもしれない。
しかし、この間の新型コロナウイルス(COVID-19)への対応に見られるように、特に危機に際して対応する国家の重要性はいささかも減じてはいないように見える。領土内での物理的強制力の正当(正統)な行使を独占する唯一の組織である国家は、感染症の蔓延のように、対処に集合行為を必要とする危機に際しては中心的役割を果たさざるをえない。しかし、国家が対応に中心的役割を果たす危機は感染症の蔓延には限られず、かつて国家論が指摘したように、経済的危機への対応にも国家が重要な役割を担っており、しかも国家の組織形態や国家-社会関係のあり方が危機対応への違いを生むとつとに指摘されてきた。さらに、危機には国家を形作る側面もある。戦争のような軍事的危機や、大恐慌のような経済的危機が、国家のあり方を根本から改めてきた。では、現下の危機は国家をどのような方向へと変化させていくのだろうか。
そこで、本共通論題では、制度形態や統治能力といった国家のあり方の違いが危機への対応にどのような差異をもたらすのかという側面と、危機が国家のあり方を形作る側面の両方を視野に入れ、理論的かつ/あるいは実証的なアプローチから検討していきたい。
司会 稗田健志(大阪市立大学、企画委員長)
報告 安中 進(早稲田大学)「政治体制とCOVID-19(仮)」
佐藤俊輔(國學院大學)「欧州統合における危機と国家(仮)」
武田宏子(名古屋大学)「再生産の危機と国家(仮)」
討論 加藤淳子(東京大学)
近藤康史(名古屋大学、企画副委員長)